ところが、最近当JCRB細胞バンクでもこの『汚れ』が話題になった。直接のきっかけは広島大学から寄託されたKasumiシリーズの細胞の一部に観察されたのだが、後になって他の細胞からもどうやら検出されるようだということがはっきりしてきた。バンクの職員は『微生物汚染』とは考えにくいと考えたのだが、責任のある結論を出すために、念のためにと原澤博士(岩手大農学部)に試料を送って調査を依頼した。その結果は、驚いたことに、自律増殖性があるということが示されたのだった。
この『汚れ』については欧米では少し前から話題になっていて、Kajanderらは分離してnanobacteriaと呼ぶと報告した(1)。しかし、未だに Kajander(1) らと Cisar(5) らで解釈が異なっている。結局『生物』か『無生物』かという判断は未だに分かれている。Kajanderらは生物と言い(1)、Cisarらは無生物の結晶成長では無いかと言っている(5)。原澤は、カルシウムが主成分であること、自己増殖をすること、血清に多く含まれてカルシウムと複合体を作るフェチュインという蛋白が検出されることなどを明らかにしたが、かんじんなDNAをまだ検出していない。必ずしも十分な結果では無いかもしれないとは思ったが、経過報告あるいは観察結果の報告という意味を込めて In vitro 誌に投稿したらアクセプトされた(7)。
生物か無生物かはともかく、カルシウムが主成分であることから結石の原因となっているのではないかというような考察(11)もあったりしてなかなか面白い展開になっているようである。細胞バンクもこの研究には関与したいが、最終的には細胞培養からの除去を検討することが目的である。
なお、原澤博士がこの『汚れ(微粒子)』を動画に収録したので掲載する(動画(2本))。通常の細菌よりもはるかに小さな微粒子が動いているように見えるのが観察される。これがブラウン運動なのかどうかということを細胞培養を使っている研究者達は「生物か無生物か」の判断のよりどころにする傾向にあるが、友人の微生物学者からはそれは生物・無生物の判断の基準にはならないと指摘された (対物レンズは40倍で撮影している)。